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TOPICS2022/06/07
退職後に不正が発覚。退職金の返還を要求できる?
退職した従業員の不正が見つかりました。
在職中に発覚すれば懲戒処分になり、退職金も減額されるような不正でした。
しかしその従業員は1か月前に退職しており、退職金も全額支給済み。
さかのぼって懲戒処分にして、退職金を返還できないでしょうか?
C社で実際にあった事例です。退職者の引継ぎをした担当者が重大な不正を発見、しかし前任者は退職済みで、退職金も振り込まれた後でした。はたして退職金の返還を要求できるでしょうか?
退職後の懲戒処分
まず退職した従業員に対して、さかのぼって懲戒処分ができるか?という点ですが、退職した従業員に対して懲戒処分を行っても有効となりません。懲戒処分は会社の規則・秩序維持のための制裁なので、会社にいない従業員に対して処分をしても無効となります。
退職金の返還要求
退職金の返還を要求するには、就業規則や退職金規定に「退職後に不正が明らかになった場合には、退職金を返還する。」と定めておく必要があります。在職中であれば「懲戒処分→退職金の減額または不支給」となるところですが、退職後は懲戒処分ができないので、懲戒を理由としない退職金減額と返還について社内規定に明記しておくことが重要です。
退職後の返還規定がない場合は、退職金の不当利得として返還を求めることが考えられます(民法703条)。本来であれば退職金を受け取る権利がないのに不当に利益を得たものなので、返還を求めることができます。
いずれの場合でも、懲戒処分や不正があった場合には退職金を減額・不支給とする規定があることが前提となります。退職金の減額・不支給の規定がない場合でも裁判で不支給が認められたケースもありますが、かなりハードルが高くなります。このようなトラブルが発生しても万全の対応ができるように、就業規則や社内規定を細部まで見直しておくことが重要でしょう。