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TOPICS2022/09/07

新卒初任給の引き上げと今後の採用

 ここ数年、初任給の引き上げが毎年のようにニュースになっています。 日本酒「獺祭」を製造する旭酒造が初任給を21万円から30万円に引き上げ話題になったことは記憶に新しいところです。 7月の総理記者会見でも、初任給に限らず賃上げの重要性について触れられていました。

    

  初任給調査

                         
2015年2016年2017年2018年2019年2020年2021年2022年
大 卒 204,634204,703205,191206,333208,826209,014209,884210,854
高 卒 165,772164,717165,628167,249168,617169,687172,025173,032

(単位:円)                  出典:産労総合研究所「初任給調査」

   

 産労総合研究所の初任給調査 によると、2022年度の初任給を引き上げた企業は41.0%でした(2021年度は29.8%)。 引き上げ理由は「人材確保のため」63.2%、「在籍者のベースアップがあったっため」45.6%。 金額は年度によるバラつきはあるものの、おおむね毎年1,000円、この7年で7000円近く上昇しています。 採用後は上昇した初任給を起点に昇給しますし、賞与や退職金を「基本給×〇ヶ月」で支給している企業はさらに大きな負担になります。 財務的体力のある大企業ならともかく、中小企業にはかなり厳しい状況ではないでしょうか。 

    

  大卒者の求人倍率

                               
2015年2016年2017年2018年2019年2020年2021年2022年
大 卒 1.611.731.741.781.881.831.531.50
高 卒 1.852.052.232.532.792.902.642.89

出典:リクルートワークス「大卒求人倍率調査」、厚生労働省「高校・中学新卒者のハローワーク求人における求人・求職状況」

 人材確保の困難さを示す求人倍率を見てみましょう。コロナ禍で若干下がったとは言え、2022年度の大卒求人倍率は1.50倍と高水準です。高卒者はどうでしょう。大卒者の統計はリクルートワークス、高卒者は厚労省の資料から取っているため単純比較は難しいのですが、高卒者の求人倍率はコロナ禍でも上がり続けています。大卒者よりも高卒者の採用の方が難しい状況で、初任給の引き上げだけでは採用は難しいかも知れません。

 少子化と進学率の上昇で、高卒で就職する人が年々減少しています。この傾向は今後も続くので、高卒者の採用は相当厳しいでしょう。しかし大卒者は、少子化による減少よりも進学率の上昇が上回り、学生数は増えています。新卒採用の対象は大卒者にするほうが、採用の可能性は高くなります。

出典:文部科学省「学校基本統計」


  今後の採用について


 とは言っても、有名大学出身で、コミュニケーション能力のある、どの企業でも採用したいような学生は、大手企業に採用されてしまします。中小企業は、大手企業が積極採用していない分野で、隠れた優秀な学生を探してみてはどうでしょうか。法学部、経済学部、経営学部などのビジネス系学部出身者ではなく、外国語学部、文学部(哲学、史学、地理学等)、スポーツ系学部、芸術系学部の出身者や、留学生、そして女子学生です。採用の優先度ではビジネス系学部・日本人男子学生の後になりがちですが、能力・資質で劣る部分はありません。こんなことを言うと身も蓋もないのですが、大学での専攻内容と会社で任される仕事には、一部の専門職を除いて関連がありません。法学部出身で法務部門に配属されるのはごく一部、あとは営業部門に配属なんてことはよくあります。ですから非ビジネス系学部から採用しても何の問題もないのです。採用の視野を広げることが中小企業の活路であり、人材難を乗り越えることが可能になります。

 今後企業が成長するためには、採用のターゲットを変えて多様な人材を活用することは必要不可欠です。採用対象は男子学生が中心という企業はまだまだ多いです。社員の構成は男性が多く、男性中心に仕事が回っているという企業は、これまでのビジネスルール・社風を変え、多様な人材が活躍できるように変革する時期です。企業のさらなる成長のために、採用を起点に社内改革を始めてみてはいかがでしょうか。