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TOPICS2022/10/31

【年末調整】配偶者が産休・育休取得で給与が少なかった場合

 年末調整の時期になりました。保険会社や金融機関から送られてくる書類を整理し、年末調整の書類に記入したり、年末調整システムに入力したりしますが、毎年のことながら手間のかかる作業です。今回は、つい見過ごしてしまいそうな配偶者控除についての話題です。


  配偶者控除

   

 配偶者控除がどういうものかはご存知の通りですが、近年細かい改正がいくつかあり、ちょっと複雑になりました。概要としては「配偶者の年間の合計所得金額が48万円以下(年収103万円以下)、納税者本人の合計所得金額が900万円以下」ということになります。配偶者特別控除もありますが、内容を分かりやすくするため今回は省略します。

 「収入」と「所得」の違いが分かりにくいかと思います。「収入」は入ってくるお金すべてになります。「収入」から必要経費を引いた額が「所得」になります。収入が給与のみで162.5万円以下の場合、必要経費として控除されるのは55万円です。収入103万円-給与所得控除55万円=所得48万円以下で配偶者控除が受けられるということになります。では、配偶者が産休・育休を取得し、会社から給与を支給されていない場合はどうなるでしょうか。


  所得税の非課税所得


 配偶者の月給が25万円で、1~3月は勤務し、4月1日から産休取得、その後も育児休業を取得したとします。6月に賞与が一部支給(25万円)されましたが、それ以外には12月31日まで給与の支給はなく、産育休中の給付金として健康保険・雇用保険から1ヵ月あたり約17万円支給されたとします。この配偶者の所得はいくらになるでしょう?


   1月~3月  月給25万円×3=75万円
   4月~12月 出産手当金・育児休業給付金 17万円×9=153万円
   6月賞与  25万円 

 すべて合計した収入は253万円になります。しかし、出産手当金・育児休業給付金は収入ではありますが、実は健康保険法、雇用保険法で課税されないことになっており、所得金額から除かれるのです。すると所得の計算は以下のようになります。

  収入253万円-給与所得控除55万円-非課税所得153万円=所得45万円

 所得が48万円以下になるので控除対象配偶者になります。 配偶者が産育休を取得し、年の終わり頃に復職したケースも同様です。1年間の大部分(またはすべて)を産休・育休を取得して会社から給与の支給がなく、所得48万円以下になれば配偶者控除を受けることが可能なのです。

 このような処理が見落とされがちな理由として、所得税の扶養親族と健康保険の被扶養者が一致していることが多いためではないかと考えています。扶養の条件等が重なる部分が多く、扶養に入る/外れるの手続きを所得税・健康保険(+第3号被保険者)で同時に行うことが実務では多いです。しかし産育休を取得しても健康保険は資格喪失しないため、配偶者が扶養に入ることはありません。そのため所得税だけ扶養(控除対象配偶者)の対象になることには気付きにくいのかも知れません。

 もし従業員の中に去年~今年子供が産まれ、配偶者が産育休を取得している場合、配偶者の所得を確認してみてはどうでしょう。所得には給与以外にも不動産所得や利子所得などありますが、合計所得48万円以下であれば年末調整で配偶者控除38万円を受けられ、所得税の還付金額が増えますので、従業員から感謝されるでしょう。もし過去にあったのに見逃していたという場合でも、5年以内なら確定申告で還付されますので、ぜひ従業員の方に周知してみてください。


参考:国税庁タックスアンサー「No.1191 配偶者控除」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1191_qa.htm