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TOPICS2023/04/13

従業員が増えると必要になる労務管理① 従業員10人~50人

 従業員数が増えるにつれて、会社として対応を義務づけられていることがいろいろあります。様々な法律で定められているため、見落として対応を忘れてしまうことも考えられます。そのような対応漏れを防ぐため、人数に応じて必要な対応について解説したいと思います。
 ここでは法律の記載に従って「従業員数」ではなく「労働者数」とします。人数のカウント対象は「常時使用する労働者」ですが、これには正社員だけではなくパートタイマー・アルバイト、安全・衛生に関するものは派遣社員も含まれます。役員、2か月以内の短期パート・アルバイト、日雇いは含まれません。また、人数のカウントは原則として事業場ごとになります(異なるものについては別途記載します)。


  常時使用労働者が10人以上

   

<就業規則の作成・届出> 労働基準法第89条
 常時使用する労働者数が10人以上になった場合、使用者は就業規則を作成し、行政官庁(管轄の労働基準監督署)に届け出る義務があります。就業規則には、始業・終業時間、休憩、休日など記載事項も労基法89条に定めがあります。また、届出の際には労働者の過半数代表の意見書も添付します(労基法90条)。

   

<安全衛生推進者・衛生推進者の選任> 労働安全衛生法第12条の2
 林業、建設業、運送業などの一定の業種(※)では安生衛生推進者、それ以外の業種では衛生推進者を選任します。(安全)衛生推進者は一定の実務経験者または労働局で登録された講習を修了した人が対象になります。労働者の危険防止の措置や健康の保持増進、労災事故の原因調査・再発防止などが職務になります。選任後に労基署に報告する必要はありませんが、選任者の氏名を事業場の見やすい箇所に掲示する等周知しなければなりません。

 (※)一定の業種・・・林業、鉱業、建設業、運送業、清掃業、製造業、電気業、ガス業、熱供給業、水道業、通信業、各種商品卸売業、家具・建具・じゅう器等卸売業、各種商品小売業、家具・建具・じゅう器小売業、燃料小売業、旅館業、ゴルフ場業、自動車整備業、機械修理業


  常用労働者数が43.5人以上


<障害者の雇用> 障害者雇用促進法43条
 障害者雇用制度は事業主ごとに適用されます。事業場単位ではないため、支店・営業所等の労働者も合算します。親会社・子会社に分かれている場合は事業主が異なるので、別々にカウントします(特例あり)。ここでは「常用労働者」の人数によって雇用義務が発生しますが、「常用労働者」とは「1年以上雇用される(見込みのある)者」です。そのうち1週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満の短時間労働者は、1人をもって0.5人の労働者とみなされます。
 2023年現在の民間企業の法定雇用率は2.3%です。常用労働者を43.5人以上雇用している事業主は、障害者を1人以上雇用する義務があります。法定雇用率は2024年4月に2.5%(常用労働者40人以上)、2026年7月に2.7%(常用労働者37.5人以上)と引き上げられる予定です。


  常時使用労働者が50人以上

 

<安全管理者・衛生管理者の選任> 労働安全衛生法第11、12条
 上記一定の業種(※)では安全管理者を選任し、事業場の安全に関する業務を管理させます。安全管理者は一定の実務経験者で厚労大臣の定める研修を修了した者、労働安全コンサルタント等が対象になります。 業種に関係なく常時使用労働者50人以上の事業場は衛生管理者を選任し、衛生に関する業務を管理させます。衛生管理者は衛生管理者免許試験の合格者、医師、衛生工学衛生管理者、労働衛生コンサルタント等が対象になります。安全・衛生管理者ともに選任後には規定の様式で労基署に届出します。


<産業医の選任> 労働安全衛生法第13条
 常時使用労働者が50人以上であれば業種に関係なく産業医を選任し、毎月1回以上事業場の巡視、労働者の健康管理等を行わせます。産業医は、医師であって、一定の研修・資格・経験のある者から選任します。選任後、規定の様式で労基署に届出します。


  参考:厚生労働省「総括安全衛生管理者・安全管理者・衛生管理者・産業医選任報告様式」
  https://www.mhlw.go.jp/content/000743322.pdf


 ◎参考:総括安全衛生管理者を選任する事業場は以下になります。                            
 業   種  常時使用する労働者数 
林業、鉱業、建設業、運送業、清掃業 100人以上
製造業(物の加工業を含む。)、電気業、ガス業、熱供給業、水道業、通信業、各種商品卸売業、家具・建具・じゅう器等卸売業、各種商品小売業、家具・建具・じゅう器等小売業、燃料小売業、旅館業、ゴルフ場業、自動車整備業及び機械修理業 300人以上
その他の業種 1,000人以上

<安全委員会・衛生委員会の設置> 労働安全衛生法第17~19条
 上記一定の業種(※)で50人以上であれば安全委員会(一部100人以上が対象の業種あり)、業種に関係なく50人以上であれば衛生委員会を設置する義務があります。統合して安全衛生委員会とすることも可能です。構成委員は、安全(衛生)の統括管理者、安全管理者(衛生委員会は衛生管理者、産業医)、安全(衛生)に関する経験がある労働者(労働者の過半数代表の推薦による)になります。毎月1回以上開催し、安全(衛生)に関する審議を行い、議事録を作成(3年保管)、その概要を労働者に周知することが必要です。


<定期健康診断結果報告書の提出> 労働安全衛生規則第52条
 定期健康診断は労働者が①、②いずれも満たす場合、1人でも実施する必要があります。
  ①期間の定めのない契約により使用される者。有期契約の場合は契約期間が1年以上または1年以上使用されることが予定されている者。
  ②1週間の労働時間数が通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分3以上であること。

 そして事業場の労働者が50人以上になると「定期健康診断結果報告書」を作成し、労基署に提出します。各項目に記入し、産業医が確認・押印の上、提出します。


  参考:厚生労働省「定期健康診断結果報告書様式」
  https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei36/dl/18_12.pdf


<ストレスチェックの実施・報告> 労働安全衛生法第66条の10
 ストレスチェックの対象者は定期健康診断の対象者と同じです。1年に1回以上、定期的に実施し、必要に応じて医師の面談等を行います。ストレスチェックの結果は定期健診と同様、所定の様式に記し、産業医が確認・押印の上、労基署に提出します。


  参考:厚生労働省「心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告書」
  https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei36/dl/24_01.pdf