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TOPICS2023/05/08
従業員が増えると必要になる労務管理② 従業員100人超
前回は常時使用労働者10人~50人の場合の労務管理をお伝えしましたが、今回は常時使用労働者100人超で必要になる労務管理です。項目が多いので、今回は100人超(101人以上)のみの解説になります。最近法改正されたものもありますので、対応済みの企業の方も再確認してみてください。
短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用 年金制度改正法
「被保険者数」(短時間労働者を除く)が常時101人以上の事業所で働く短時間労働者は、健康保険・厚生年金保険の適用対象となります。短時間労働者は以下の条件すべてに該当する場合になります。③は2022年10月に改正されていますのでご注意ください。
①週の所定労働時間が20時間以上
②賃金の月額が88,000円以上
③2か月を超える雇用の見込みがある(←改正前は「雇用期間が1年以上見込まれる」)
④学生でないこと
※2024年10月以降は被保険者数が常時51人以上になります。
参考:日本年金機構 短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大
https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/tekiyo/jigyosho/tanjikan.html
一般事業主行動計画の策定・届出・公表・周知 次世代育成支援対策推進法
急速な少子化や家庭・地域を取り巻く環境の変化を踏まえ、次代の社会を担う世代が育成される社会を実現するため、2003年に「次世代育成支援対策推進法」が制定されました。仕事と育児の両立できる雇用環境の整備等を計画・取り組む義務を企業に課しています(100人以下の企業では努力義務)。
①自社の現状や従業員のニーズを把握する(推奨)
②行動計画を策定する(義務)
③行動計画を自社HPまたは厚生労働省が運営するウェブサイト「両立支援のひろば」等で公表、従業員へ周知する(義務)
④都道府県労働局雇用環境均等部(室)へ届け出る(義務)
参考:厚生労働省 一般事業主行動計画の策定・届出等について
https://www.mhlw.go.jp/general/seido/koyou/jisedai/index.html
<認定制度 : くるみん・トライくるみん・プラチナくるみん・プラス>
行動計画に定めた目標を達成し、育休取得率等の一定の要件を満たした企業は、申請によって厚生労働大臣の認定(くるみん・トライくるみん)を受けることができます。さらに、くるみん・トライくるみん認定を受けた企業が、より高い基準の要件を満たすと特例認定(プラチナくるみん)を受けることができます。認定マークを商品、広告、HPなどに付けることで、子育てサポート企業であることをPRできます。また、各府省庁における公共調達で加点の対象になる場合があります。
不妊治療と仕事の両立に取り組む企業を認定する「プラス」制度が2022年4月に新設されました。3種類のくるみんマークにそれぞれ「プラス」マークが追加されます。常用労働者300人以下でくるみん(プラス)・プラチナくるみん(プラス)認定を受けた企業に対し、上限50万円の助成金もあります。詳しくは「くるみん助成金ポータルサイト」をご覧ください。

参考:厚生労働省 リーフレット「令和4年4月1日からくるみん認定、プラチナくるみん認定の認定基準等が改正されます!新しい認定制度もスタートします!」
https://www.mhlw.go.jp/content/11910000/000911853.pdf
一般事業主行動計画の策定・届出・公表・周知 女性活躍推進法
女性の職業生活における活躍が一層重要となっていることを踏まえ、男女の人権が尊重され、⼥性の個性と能⼒が⼗分に発揮できる社会を実現するため、2015年に「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(以下「女性活躍推進法」)が制定されました。女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供(区分(1))、職業生活と家庭生活の両立に資する雇用環境の整備(区分(2))等を計画・取り組み・情報公開の義務を企業に課しています(100人以下の企業では努力義務)。
①自社の現状や従業員のニーズを把握(義務)
②行動計画を策定する(義務)※数値目標あり
③行動計画を自社HPまたは厚生労働省が運営するウェブサイト「女性の活躍推進企業データベース」等で公表、
従業員へ周知する(義務)
④都道府県労働局雇用環境均等部(室)へ届け出る(義務)
⑤女性の活躍に関する情報の公表(義務)
従業員数によって②、⑤の実施内容に違いがあります。常時雇用労働者が101人以上の企業は、上記の区分(1)(2)のすべての項目から1項目以上で数値目標を設定、実績を公表します。301人以上の企業は区分(1)(2)それぞれから1項目以上(合計2項目以上)で数値目標を設定、実績を公表します。
参考:厚生労働省 パンフレット「一般事業主行動計画を策定しましょう!!」
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000614010.pdf
<認定制度 : えるぼし・プラチナえるぼし>
行動計画の策定・届出を行った事業主のうち、女性の活躍推進に関する状況等が優良な企業は、申請によって厚生労働大臣の認定(「えるぼし」「プラチナえるぼし」)を受けることができます。女性活躍推進事業主であることをPRできることに加え、中小企業の場合、各府省庁における公共調達で加点の対象になる場合があります。

参考:厚生労働省 「えるぼし認定、プラチナえるぼし認定の概要」
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000594317.pdf
障害者雇用による納付金・調整金 障害者雇用促進法
障害者の雇用義務は常用労働者43.5人以上の事業主にありますが、常用労働者100人超の事業主が法定雇用率に未達の場合、障害者雇用納付金を納付する必要があります。納付額は不足する障害者数1人につき月額5万円です。法定雇用率を超えて障害者を雇用している事業主には、障害者数1人につき月額2万7千円の障害者雇用調整金が支給されます。
常用労働者100人以下の事業主でも、一定基準を超えて障害者を雇用している場合には、障害者数1人につき月額2万1千円の報奨金が支給されます。
参考:(独)高齢・障害・求職者雇用支援機構 障害者雇用納付金制度の概要
https://www.jeed.go.jp/disability/about_levy_grant_system.html
<認定制度 : もにす>
常時雇用する労働者が300人以下で、障害者雇用への取組・成果・情報開示の基準等を満たした企業は、申請によって厚生労働大臣の認定(「もにす」※企業と障害者が「共にすすむ」に由来)を受けることができます。障害者雇用推進事業主であることをPRできることに加え、中小企業の場合、各府省庁における公共調達で加点の対象になる場合があります。

参考:厚生労働省 「障害者雇用に関する優良な中小事業主に対する認定制度(もにす認定制度)」
https://www.mhlw.go.jp/stf/monisu.html
特定個人情報に関する安全管理措置 個人情報保護法
常用労働者100人以下の中小規模事業者はマイナンバーや個人情報を取り扱う件数が少ないため、特例により安全管理措置の対応を軽減されていました。100人超になると、取扱規程等の策定、組織体制の整備、技術的安全管理措置などガイドライン本則通りの対応が求められます。法律上は100人超で対応義務が発生しますが、個人情報の取扱いは従業員数に関わらず非常に重要です。漏洩リスクを考えると、100人以下の企業でも可能な限り対策をしておくことが望ましいです。
参考:個人情報保護委員会 「特定個人情報の適正な取扱いに関するガイドライン(事業者編)」
https://www.ppc.go.jp/legal/policy/my_number_guideline_jigyosha/