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TOPICS2023/06/12
従業員が増えると必要になる労務管理③ 従業員300人~
常時使用労働者10人~50人、100人超の労務管理をお伝えしましたが、今回は300人~の労務管理になります。

常時使用労働者が301人以上
<中途採用比率の公表義務> 労働施策総合推進法第27条
大企業ほど新卒採用が中心で中途採用に消極的な傾向が見られたため、中途採用者にも再チャレンジが可能となるような環境整備推進を目的として定められました。
直近3事業年度の各年度ごとに、採用した正規雇用労働者のうちの中途採用比率を算出し、おおむね年1回公表します。公表方法は自社のホームページに掲載するか、求職者等が容易に閲覧できる方法とされており、厚生労働省がインターネット上に開設する職場情報総合サイト「しょくばらぼ」の利用も含まれます。法律上は中途採用比率の公表が義務付けられていますが、会社の判断によって、採用人数や男女別の中途採用比率などを公表することも可能です。
中途採用を積極的に行い、拡大しようという企業には「中途採用等支援助成金」という助成金もあります。
<「男女の賃金の差異」の情報公表義務> 女性活躍推進法
日本における男女間賃金格差は長期的に見ると縮小傾向にありますが、更なる縮小を図るため、常用労働者301人以上の企業に対して公表が義務づけられました。
常用労働者101人以上でも「女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供」または「職業生活と家庭生活の両立に資する雇用環境の整備」(詳しくはパンフレット参照)から1項目の公表がありましたが、301人以上ではさらに「女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供」から1項目、「職業生活と家庭生活の両立に資する雇用環境の整備」から1項目に加えて「男女の賃金の差異」の公表義務が加わります。
具体的には、男性労働者の賃金の平均に対する女性労働者の賃金の平均を割合(パーセント)で示します。「全労働者」「正規雇用労働者」「非正規雇用労働者」の区分での公表が必要です。
<「男女の賃金の差異」の情報公表のイメージ>
※対象期間(〇年〇月〇日~〇年〇月〇日)も付記する。
賃金の割合は小数点第2位を四捨五入し、小数点第1位まで表示。
区 分 | 男女の賃金の差異 (男性賃金に対する女性賃金の割合) |
---|---|
全 労 働 者 | XX.X% |
正 社 員 | YY.Y% |
パート・有期社員 | ZZ.Z% |
<内部通報対応体制整備の義務> 公益通報者保護法第11条
常時使用する労働者の数が300人を超える全ての事業者に対し、内部公益通報対応体制の整備義務を課しています。具体的には、内部公益通報受付窓口の設置、調査を実施し、法令違反行為が明らかになった場合には速やかに是正に必要な措置を取ること、通報者保護の徹底、役員・従業員への教育・周知などがあります。
300人以下の企業では努力義務とされていますが、不正の早期発見・早期是正の観点から、可能な範囲で通報体制の整備をするのが望ましいでしょう。
通報窓口は総務部に設置されることが多いですが、パートタイム労働者の相談窓口やハラスメント相談窓口も併設されており、担当者の負担も大きいです。また、通報者も社内窓口への相談は抵抗があるケースも多いので、相談窓口の外部委託も選択肢としてご検討ください。
参考:消費者庁「公益通報ハンドブック」
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_partnerships/whisleblower_protection_system/overview/assets/overview_220705_0001.pdf
<中小企業退職金共済(中退共)から他制度へ移換>
退職金の外部積立として中小企業退職金共済(中退共)を利用している中小企業も多いと思います。掛金が全額損金になり、手数料もなく、国の助成も受けられるなどのメリットがあります。中退共に退職金を積み立てができる企業の条件は以下となっています。
業 種 | 常用従業員数・資本金 |
---|---|
一 般 業 種 | 300人以下 または 3億円以下 |
卸 売 業 | 100人以下 または 1億円以下 |
サービス業 | 100人以下 または 5千万円以下 | 小 売 業 | 50人以下 または 5千万円以下 |
常用従業員とは、一週間の所定労働時間が同じ企業に雇用される通常の従業員とおおむね同等である者であって、「雇用期間の定めのない者」「雇用期間が2か月を超えて使用される者」を含むとされています。
この条件に該当しなくなった場合は、確定給付企業年金、確定拠出年金、特定退職金共済のいずれかに移行することになります。
常時使用労働者が1001人以上
<男性の育児休業の取得状況の公表義務>育児・介護休業法
2023年4月から、常時雇用する労働者が1,000人を超える企業は、男性労働者の育児休業等の取得状況を年1回公表することが義務付けられました。公表する内容は以下のいずれかになります。
①育児休業等の取得割合 | ②育児休業等と育児目的休暇の取得割合 |
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育児休業等をした男性労働者の数 ------------------------------------------------ 配偶者が出産した男性労働者の数 | 育児休業等をした男性労働者の数 + 小学校就学前の子の育児を目的とした休暇制度を 利用した男性労働者の数の合計数 ------------------------------------------------------------------ 配偶者が出産した男性労働者の数 |
②の「育児目的休暇」とは、企業独自の育児休暇で就業規則等に定めたものになります。①②どちらかの割合を自社のホームページ等のほか、厚生労働省が運営するウェブサイト「両立支援のひろば」で公表することも可能です。また、任意で「女性の育児休業取得率」や「育児休業平均取得日数」なども公表して自社の実績をPRすることも推奨されています。