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TOPICS2024/8/8
振替休日(振休)と代休の違いは?②
休日出勤した代わりに休みを取得できる振休・代休制度の2回目、今回は代休について運用ポイントの紹介をいたします。

代休とは
前回にもご紹介しましたが、代休は休日出勤した後に、その代償として労働日を休日にする制度です。休日の振替にはならないので、休日を付与したとしても以前に行った休日労働が帳消しにはならず、休日労働の割増賃金が発生します。代休制度を実施するためには、休日労働があることを就業規則に規定し、36協定を締結する必要があります。別の制度で月60時間超の時間外労働に対して付与される代替休暇がありますが、混同しないようにしましょう。
すこし細かい話になりますが、代休は休日労働が発生した後に休日が付与される制度です。そのため、休日労働が禁止されている年少者や、育児・介護により所定外労働が免除されている従業員は、代休制度の対象にはなりません。代休を付与しても休日労働を命じたことによる法律違反になりますのでご注意ください。
代休の運用のポイント
<代休取得日の指定>
会社が命じて従業員に休日労働させたとしても、会社が代休を付与する義務は法的にはありません。代休を付与するか否か、代休を付与する場合の手続き等、就業規則で定めることになります。本来は働く義務のある所定労働日に休日労働の代償として休むので、代休取得には会社の許可・承認が必要です(民法519条:下欄参照)。年次有給休暇のように従業員が休業日を指定して成立するものではありません。従業員に代休を請求する権利を認めるのであれば、就業規則に「従業員の希望する日に代休を付与する」と定める必要があります。実務的には折衷案として「従業員が代休希望日を申請し、会社が承認した場合」とすることが多いです。
<代休の取得期限>
振替休日と同様に法的に明確な定めはありません。管理上の手間を考えると、あまり長期間になるのは望ましくありません。就業規則で一定の取得期限を設けておくのがいいでしょう。
<代休の取得単位>
振替休日は1日単位で取得する必要がありますが、代休の取得単位は特に制限はありません。半日単位や時間単位の取得も可能です。さらに、4時間の休日出勤2回で代休1日(8時間)ということもできます。取得単位をどうするか、企業の実情に合わせて就業規則で定めましょう。
<代休と割増賃金>
出勤した休日に割増賃金が発生する場合は、代休を取得した上に割増賃金を支払う必要があります。割増賃金の計算をいくつかのパターンに分けて考えてみましょう。
①法定休日に出勤した場合

法定休日の労働に対する割増率は35%です。日給10,000円の従業員が法定休日に出勤した場合、その日の賃金は日給10,000円+割増賃金3,500円=13,500円になります。10日に代休を取得すると、日給部分は相殺されて支給されませんが、割増賃金は残るので支給されます。代休として1日休日+代休手当3,500円の支給になります。もし仮に代休を同一週内(たとえば4日)に取得したとしても、休日の振替にはなりませんので、代休手当の支給は必要です。
②所定休日に出勤した場合

所定休日に出勤し、週の労働時間が40時間を超えると割増率は25%です。上記①と同様に日給10,000円の従業員が翌週10日に代休を取得すると、代休として1日休日+代休手当2,500円の支給になります。
③祝日(所定休日)に出勤して同一週に代休を取得した場合

代休手当が支給されないケースです。3日(祝)に出勤しても、この週の労働時間が40時間を超えないため割増賃金が発生しません。翌週10日に代休を取得しても、代休1日のみで代休手当の支給はありません。
このように、代休取得による割増賃金の計算は複雑です。勤怠管理ソフトでも設定することができず、給与担当者が別途計算して割増賃金を支給することになります。その手間を軽減するため「代休1日あたり〇〇円の代休手当を支給する」ということも可能ですが、人件費としては割高になります。代休の給与計算や制度設計でお悩みの際には、勤怠管理・給与計算に強い専門家に相談することをお勧めします。

民法519条 「債権者が債務者に対して債務を免除する意思を表示したときは、その債権は、消滅する。」
会社(債権者)が従業員(債務者=労務を提供する債務を負っている者)に対して所定労働日の労働(債務)を免除する意思を示したときに、労働(債権)が消滅して代休が認められる。債務者の意思に関わらず債権者が一方的にできる、いわゆる「単独行為」とされているので、会社が一方的に代休取得日を指定することもできる。(「労働時間・休日・休暇の法律実務[改訂七版]」著:安西 愈)