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TOPICS2024/9/28

従業員が無断で休日出勤してケガ!労災は認定される?

 従業員が会社に無断で休日出勤していた。それだけでも問題がありますが、その無断出勤中にケガをした場合、はたして労働災害(労災)は認められるでしょうか。今回は労災認定のポイントと無断出勤の対応を解説します。

 

  労働災害(労災)が認められる基準は?

 労災には、業務中の事故である業務災害、通勤中の事故である通勤災害、複数の事業の業務を要因とする複数業務要因災害があります。このうち業務災害の認定は「業務遂行性」「業務起因性」によって判断されます。


 「業務遂行性」とは、事故が事業主の支配・管理下にあるときに発生したかということです。職場での業務中に限らず、休憩中や出張先での事故も含まれます。「業務起因性」とは、ケガや病気が業務を原因として生じているということです。たとえば業務中にぎっくり腰になったとしても、もともと持病だった場合には業務起因性は認められません。

 業務災害に認定されるには、「業務遂行性」が認められた上で「業務起因性」も認められることが必要です。「業務遂行性」が認められなければ「業務上」発生したとは言えないため、「業務起因性」を判断するまでもなく業務災害は認定されません。


  無断出勤と業務遂行性

 従業員が会社から命令されて休日出勤していれば業務遂行性は認められますが、従業員が会社の許可を得ずに休日出勤した場合には事業主の支配・管理下にあるとは言えず、業務に起因するものだったとしても業務災害とは認められません。

 しかし、会社から命じられた業務が膨大で通常の業務時間内では終わらないことが明らかな場合や、休日出勤していることを上司が知りつつ黙認していた場合などは、事業主の支配・管理下にあると判断されて業務災害が認められる可能性があります。会社が時間外労働をするように具体的に指示していなくても、黙示の指示があったと見なされ、事業主の支配・管理下にあったと認められることになります。

 無断出勤なので会社は労災申請を拒否するかもしれません。そのような場合、労災の申請は従業員自身が行うことになります。もし無断出勤でも労災が認められると、業務遂行性が認められたことになりますので、会社は休日出勤手当を支払うことになります。加えて、職場環境の安全に不備があったとして安全配慮義務違反による損害賠償を求められる可能性もあります。


  会社が取るべき対策

 労災が起きないように職場環境を改善しても、労災をゼロにすることはなかなか難しいです。もし職場内で事故が発生した場合には、業務遂行性が認めにくい状況だったとしても、会社としては取り合えず労災申請をしましょう。

 従業員が無断で休日することを防ぐために、休日出勤は許可制にすることをお勧めします。許可を得ていない休日出勤は禁止であることを就業規則に明記し、従業員に周知しましょう。無断で休日出勤する従業員は、担当する業務量が多く、仕方なく休日出勤していることも考えられます。従業員と面談し業務の配分を見直すことで、休日出勤の削減にもつながります。

 上記対策をしても無断で出勤する従業員には、業務命令違反として懲戒処分を検討する必要があります。本来休息をとるべき休日に出勤している従業員は、十分に疲労が回復せず、過労による疾病のリスクが高まります。また、無断で休日出勤する従業員がいると、他の従業員に「ブラック企業」というイメージを持たれる可能性もあります。特に入社間もない若手従業員が休日出勤する先輩従業員を見たら、自分の将来に不安を感じて早期離職してしまうことも考えられます。

 無断の休日出勤を放置してしまうと、会社は様々なリスク、損失が発生します。会社にとって必要な労務管理の在り方を再度見直してみてはいかがでしょうか。