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TOPICS2025/11/10
従業員の過半数代表者(労働者代表)の選び方①
茨城県の学校法人で、就業規則を変更する際に意見聴取する従業員の過半数代表者や、「時間外・休日労働に関する協定」(通称:36協定)を締結する際の過半数代表者の選任方法が不適切だったため、労働基準法違反の疑いで事務局責任者と理事長兼校長が書類送検されました。
出 典 : 労働新聞「就業規則変更 意見聴取せず送検 代表者を指名で選出 土浦労基署」
(引用元) https://www.rodo.co.jp/news/206761/
同法人では従業員の過半数代表者を会社が指名しており、民主的な手続きを取っていなかったため不適切と判断されました。労働基準法第36条では、会社と36協定を締結するのは「労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者」としています。労働組合のない会社では労働者の過半数を代表する者を選出することになりますが、選出が適正に行われていないと様々なリスクがあります。そこで今回は過半数代表者の選出方法について掘り下げてみたいと思います。
過半数代表者の法律上の規定
過半数代表者について「労働基準法施行規則」では以下のように定めています。
第6条の2 (前略)労働者の過半数を代表する者(以下この条において「過半数代表者」という。)は、
次の各号のいずれにも該当する者とする。
(1)法第四十一条第二号に規定する監督又は管理の地位にある者でないこと。
(2)法に規定する協定等をする者を選出することを明らかにして実施される投票、挙手等の方法
による手続により選出された者であって、使用者の意向に基づき選出されたものでないこと。
第1号では「労働基準法第41条第2号に規定する管理監督者でないこと」が定められています。これは企業内の呼称である「管理職」とは異なり、「労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者」です。具体的には部長、工場長などの立場にある人で、そのようなポジションの人は過半数代表者にはなれません。
法律には書かれていませんが、職務内容が経営者側に近い総務部・人事部の従業員も、従業員代表者という立場と職務の両立が難しいので、過半数代表者に選出するのは避けた方がいいでしょう。
出向者は通常、出向先の就業規則が適用され、出向先で労務管理を受けますので、出向先の労働者として過半数代表者になることは可能であると考えられます。逆に出向元で過半数代表者になるのは、出向中は出向元の就業規則の適用や労務管理を受けていないため、現実的ではないと言えるでしょう。
パートタイマーが多い事業場では、パートタイマーが過半数代表になることも考えられます。パート・有期労働法第7条では、パート就業規則の作成・変更の際には、パートタイマーの過半数代表者の意見を聴くことを努力義務として定めています。
また、過半数代表者は事業場ごとに選出します。36協定などの労使協定は事業場単位で締結するのが原則であるため、事業場ごとに過半数代表者が必要です。労基署への届出は本社一括が可能なものもありますが、過半数代表者は事業場(支社、営業所、店舗など)ごとに選出しましょう。
過半数代表者の選出手続き
上記の第2号では過半数代表者の選出について規定されています。まず選出にあたっては「法に規定する協定等をする者を選出することを明らかにして実施される」とあり、原則的には労使協定の締結や就業規則変更の都度選出することが想定されています。そして使用者(会社)が指名した者などではく、投票などの民主的な手続きで選出された者としています。
選出手続きが争点になった代表的な裁判として「トーコロ事件」(最判平13.6.22)があります。残業命令を拒否した従業員が解雇され、解雇無効を訴えて提訴しました。役員を含めた全従業員が加入する親睦会の代表者が過半数代表者として締結した36協定の有効性が争われました。判決では、過半数代表者が適法に選出されたというためには、以下の要件を満たす必要があることが示されました。
①選出される者が労働者の過半数を代表して36協定を締結することの適否を判断する機会が与えられていること
②過半数の労働者がその候補者を支持していると認められる民主的な手続がとられていること
したがって親睦会の代表が締結した36協定は無効と判断されました。会社側に残業命令をする権限がないことになり、時間外労働の命令に従わなかった従業員の解雇も無効となりました。
では適法に過半数代表者を選出するには具体的にどのようにするのがいいでしょうか。会社が取るべき選出の手続きについて、次回くわしく解説します。